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-39- 顧客第3主義
標語として「お客様ファースト」とか「顧客第1主義」などが企業の看板に掲げられていることは珍しくない。むしろ平凡な印象さえ抱く。工場に埃を被った「品質第一」の垂れ幕に通じる。 これまで経営姿勢を問われた時には「顧客第3主義」だと答えてきた。お客様は、第2でもなく第3なのである。必ず、第1は何かとか、その理由を質問される。その答えは、「1に安全/2にコンプライアンス/3が顧客/4に業績」である。何をおいても社員の安全が一番。その日一日仕事して無事に帰宅することが経営上の最も優先されることである。社員は消耗品ではない、資産である。長く培うことで資産価値は日々向上する。第2は遵法、コンプライアンス。もう一歩踏み込んで言えば、モラル。第3にお客様となる。社員の安全を冒したり、法を破ってまで顧客を優先することはない。そして、安全と遵法を優先して、お客様からの支持を獲得すると、おのずと業績は上がってくるものなのだ。それが、この「顧客第3主義」の意味合いである。
●ポイント 成果主義や業績連動賞与には、ノルマ主義や売上至上主義が隠れている場合が少なくない。経営者が如何に言葉で取り繕ったところで、社員は見抜いているもの。報酬だけで組織を牽引出来ると錯覚しないことである。
2023/09/13
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-38- マネジメントの条件:integrity
マネジメントの条件として、ドラッカーの意見を紹介したい。ドラッカーは「integrity」がマネジメントに最も重要であると説いた。 『真摯さを定義することは難しい。しかし真摯さの欠如は、マネジメントの地位にあることを不適とするほどに重大である。人の強みよりも弱みに目が いく者をマネジメントの地位につけてはならない。人のできることに目の向かない者は組織の精神を損なう。マネジメントに携わる者は現実化でなけれ ばならない。評論家であってはならない。 何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心をもつ者をマネジメントの地位につけてはならない。誰が正しいかを気にすると、部下は無難な道をとる。 おかした間違いを正すよりも隠そうとする。 真摯さよりも頭のよさを重視する者をマネジメントの地位につけてはならない。有能な部下に脅威を感じる者もマネジメントの地位につけてはならな い。そして、自らの仕事に高い基準を設定しない者をマネジメントの地位につけてはならない。』 ドラッカーの言葉「integrity」を「真摯さ」と訳することにいろいろな意見はあるが、頗る納得できる言葉だと思う。
●ポイント 企業や政治の世界を見まわしてみよう。そこに君臨するリーダーに私利私欲を超えた「真摯さ」は見つけられるであろうか。理念なきリーダーには真摯さを見つけることなど到底不可能であろう。
2023/08/17
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-37- さん呼び会社の是非
会社の風通しを良くするとのトップ意向で「さん呼び」がルール化される会社も少なくない。言い換えると、社内での役職呼称が禁止される訳だ。上司部下・先輩後輩・職種など関係なく、みんな「〇〇さん」になる。同姓が多い部署では非常に面倒なことになる。 それも1つの考え方ではあるが、役職呼称を止めさせて企業風土を変えるというのは安易だとの指摘もある。さん呼び会社で凋落した事例もあると聞く。 対外的には強要できないので社外では役職付きで呼び合う。これも妙な姿である。“私は風通しの良い会社に取組んでいます”という経営者ポーズであるケースも少なくない。 凋落した会社の特長は、社員の仕事のレベルが「さん」になること。課長のレベル、部長のレベル、取締役のレベル、それらが「さん」のレベルに陥る。それが問題である。
●ポイント 社員個々の能力を最大限引き出すことがリーダーの仕事。決して、個人やチームの向上心を奪うことになってはならない。風土改革を展望する時、呼称問題だけで終わらないこと。風通しの悪い原因に打ち手を講ずることである。
2022/03/25
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-36- 本番練習するな!
ビジネスの世界で何かミスしたり失態を冒した本人から反省の弁として聞かれる言葉として「次の機会にはちゃんとやります」が多い。本人の悔しさや意気込みは理解してやりたいが、これを許してはダメ。 例えば、プロ野球で好機に三振した選手が「次は打ちます」で済まされることはないだろう。サッカーでチャンスシュートを外した選手が言う「次は決めるから」を信用するだろうか。 世界の王選手は畳が擦り切れるまで深夜に素振りしたと言われる。キングカズはサッカーがもっと上手くなりたいと自主練を怠らない。頂点に近付くプロは皆が休んでいる時に必死に練習しているのだ。 次の機会に打つ、次は決める、それは本番の話。気持ちだけで結果を出そうとすることを「本番練習」と言う。これを許してはならない。 生産工場の現場で不良品が発生した。「次はちゃんと作ろうぜ」を許す工場の品質を信用してはならない。再発しない仕組みを構築するまで生産を止める、これが練習である。ちゃんと作ろう、そういう製品は顧客へ届ける製造で練習しているのだ。 リーダー格の仕事ならば、チームのミスを叱責する前に「本番練習」が蔓延っていないかを点検しよう。
●point 失敗やミスの結果を問題視しても進歩はない。むしろ、リーダーとメンバーの間に溝が生まれ兼ねない。ミスが出ない策を講ずること。それをチーム全体で取り組むことで組織的に進化する。トヨタ生産方式の根っ子は、そういう点にあると感じる。
2022/03/03
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-35- 黄金の蹄
イギリスでは羊を指して「黄金の蹄」と呼ぶ。荒れた土地に羊を放牧すると、雑草を食べて、その蹄で土地を耕す効果がある。風で飛んできた種をよく踏み込んで、やがて時間の経過と共に見事な牧草地になる。ゆえに、羊たちの蹄を「黄金の蹄」と呼ぶ。
●ポイント マーケットの捉え方を示すフレーズ。市場を駆けまわって「買ってくれる客を探す」営業は多い。業績が上がらないと、痩せ細った市場を嘆く声を上げる。市場を歩き回る価値は、客を探すのではなく、客を育てること。「豊かな市場に耕す」活動が営業と言う仕事なのである。
2021/12/02
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-34- マップ(MAP)を渡せ
新組織発足や新メンバー迎えるタイミングにはリーダーへの注目度が上がる。ここで、何を示すのかがポイント。リーダーの指示が不明確だとメンバーは迷子になる。どこで何をするのかが分からないと部下は道に迷うばかり。 そこで重要なことは「地図を渡せ」である。地図MAPとは、Mission/Anticipation/priorityの略。まず第一に「我々はどういう目的を持ったチームだ」という方針や使命を占めすこと。その上で「君にはこういう点に注力して欲しい」という個々への期待値を語る。3つ目に「その中でも最初に取組んで欲しいことを絞る」というアクションの優先順位を見せること。これがMAPの意味合いである。 上位から降りて来たノルマを伝達するだけでは、新組織や新メンバーはスタートダッシュが出来ない。自らの言葉で自らの責任で組み立てたプランをMAPに組み上げることである。
●ポイント 10名程度の少人数チームでは全メンバーにMAPを用意すること。それを超えた大規模組織の場合は、各チームのリーダーに対してMAPを作る。 進捗管理を実績という結果だけで采配することは人材育成にならない。アクションやプロセスを見て指導することことが育成に繋がる。
2021/07/18
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-33- 打席と打率
「打席数の足りない選手にテクニックを教えるな!」が決めの言葉。 プロ野球では打率3割が好打者のラインと言われる。しかし、1年間に3本のヒットしか打たない3割バッターは対象外である。ヒットの総本数がチーム貢献度と言える。言い換えると、1年間に100本のヒットを打つのがプロ。 これを営業現場に置き換えると、営業スキルが未熟でも1年間に100本打ちたければ打席数を増やす。つまり、顧客訪問数を増やすことだ。一流営業が334打席×3割で100本打つなら、打率2割のスキルであっても500打席×2割で100本打てる。顧客訪問数でカバーして100本打つことだ。その経験の上で、技術を学ぼう。成長意欲のない者ほど、100打席×10割を夢想する。目標と希望は別物である。 打率の前に打席、これが一流への道である。
●ポイント 現場に出ることで自分自身のスキルが分かって来る。その上で技術力アップに取り組むべし!という訓えでもある。野球初心者にいきなりカーブの打ち方やフォークボールの打ち方は教えない。まずは、ボール球を打つな。その次に真ん中の直球の打ち方を教える筈。場数を踏まずして、技術を教えてはならない。
2021/04/30
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-32- 果決
植物は枝を出し葉を茂らせて派生してゆく。しかし、あまり派生して枝葉が茂り過ぎると、木の生命力は衰える。そこで剪定する。植物には幹に精力を蓄積させようとする働きがある。その働きを最大化させて植物の生命力を高める為に必要以上の枝葉を切り落とすのである。陽明学者の安岡正篤氏はこれを「果決」と示した。 例えば、菊が10輪の花を咲かそうとしている時に見劣りする9輪を切る。思い切って剪定すること、それが「果決」である。成り行きで中途半端な花を咲かせるのではなく、ベストな大輪の花を咲かせることがビジネス上の重要な決断である。
●point 経営で言えば、10件の事業案に投資したい気持ちは分かる。しかしながら、それは投資過剰で起業財務体質を弱めることに繋がる。 成り行きを捨て、1つの事業案に集中投資することで投資の最大効果を引き出す。1件の大きな成果を導き出すことがリーダーの仕事である。その際に「果決」が求められる訳である。
2021/03/08
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-31- アムンゼン隊とスコット隊
南極点到達を競ったアムンゼン(ノルウェー探検家)とスコット(イギリス海軍軍人)の明暗から学ぶことは多い。 世界最初の南極点一番乗りを目指したが、アムンゼン隊が1911年12月14日に到達して5名全員が無事に帰還。 一方のスコット隊は1ヶ月遅れて翌年1月17日到達で一番乗りならず。しかも、帰路の悪天候で全員が遭難死した。 アムンゼンは探検家らしく、年数をかけて用意周到に準備。隊員と作戦共有して各自の専門性を尊重した。スコットは当時の軍人特有の個人名誉欲が勝っており、極地探検や操船の経験もないまま、隊員に自由を与えなかったと言われる。 8人分装備で5人体制で臨んだアムンゼン隊と直前に4名から1名増員したスコット隊の装備差や、ライバルに勝つことだけを念頭に置いたスコットと危険が大きければ引き返せば良いと言っていたアムンゼンのリーダーの考え方の違いが結果の大差を生んだとも言われる。 ビジネスに置き換えても同じである。大きな目標に向かう時は、「周到な計画/メンバーの専門性を活かす/十分な装備/安全最優先」を教訓としよう。
●point 南極大陸に先に到着したのはスコット隊。ところが、デポ作戦で躓いたと言われる。物資補給が出来ない行程で往復3000キロもの長距離移動を可能にする為に、大量な物資を先回りして貯蔵しておく行動がデポ。雪上車が故障し、馬が倒れて行き、物資輸送が計画に遠く及ばなかったスコット隊。 一方のアムンゼン隊はエスキモー犬の特性を見抜いて大量に連れて行った、その数116匹。デポは計画以上に配置出来た。 人の技術だけでなく、装備品や人以外の準備したものへの考察や判断が重要ということである。 準備段階で結果は見えていたとは言い過ぎだろうか。
2021/02/09
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-30- 過去は変えられる。
一般的には「過去と他人は変えられない」と言われて、言い換えると「未来と自分は変えられる」という前向きな姿勢を求められます。このフレーズは他責を否定して、何事も自責の気持ちで立ち向かえようというもの。 しかし、ここでは「過去は変えられる」と言いたい。正確に言えば、「過去の価値は変えられる」である。過去に起きた事実は事実。タイムマシンで戻る訳には行かない。営業が失注したのならば、それは事実。但し、そこからが成功者の違いが現れる。その失注原因やタイミングなどを精査。同じミスを繰り返さない工夫を講ずるかどうかで差が生ずる。 最大限失敗を最小化して、次なる成功の最大化に繋げることが出来れば、それは「過去の価値を変えた」ことになると言える。
●point 全てが成功するパーフェクトマンはいない。神でもミスをする。重要な点は、その後始末。起こってしまった失着をよき経験として次の成功要素に活用する姿勢が大事。それが叶えば、過去の失敗を「価値ある失敗」と価値転換出来るのである。
2020/10/02
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